雑記

如月小春「MOON」|俺はこういう舞台に出たかった

  • LINEで送る
     

どうも、りんこと吉田光です。

ついに私が出演する舞台、KUROGOKU Produce「MOON」が明後日19日(水)に上演されます。それにあたって色々と思いだったり考えていることだったりしていることを綴ろうと思います。

因みに本記事を書くに至ったきっかけが役者仲間である寺村恵理加(えりちゃん)のnote(自身の出演舞台への思いを綴った記事)だったんですが、正直あそこまで上出来なものは書けへんのでご容赦を。この記事では勢いで書きます(笑)

えりちゃんの舞台に対する思いを綴ったnoteはこちら

如月小春とは

如月小春(1956–2000)は劇作家・演出家の方で、特に1980年、90年代に小劇場界隈で大活躍された方です。上記の通り、2000年に44歳という若さで急逝され、当時は衝撃的だったようです。当時の戯曲やエッセイを読む限り、佳人薄命という言葉が相応しい方だったんだろうなぁと思います(因みにお写真を見た限りでもむっちゃ美人)。まぁ、表現が適切かは置いといて、ですが…。

恥ずかしながら、この舞台に出るまではお名前を存じ上げなかったのですが、知れば知るほど面白くてたまんねぇですわ。代表作は「DOLL」ですね。これは最近ちょくちょく上演されています。来月にも絵空箱で「DOLL」が上演されますね(友達の小川結子ちゃんが出演します)。

さてここから自分なりに如月氏について調べてことを綴ろうと思うのですが、流石に当時の如月さんを追っていた方や、都市文化論の研究を通して如月氏の本を何度も読了されている方に比べればつたない出来になると思います。「素人質問で恐縮なのですが」と言われたら私の胃が爆散するので、何卒色々とご容赦いただければと思います。

如月小春さんといえば「都市論」で有名です。演劇以外の研究者からも引用されています。戯曲はもちろん、エッセイにもそれが色濃く出ており、「都市の遊び方(1988年)」「東京ガール(1989年)」などのエッセイでは東京という都市がどのようなものなかというのを彼女独自の視点から綴っています。因みに「都市の遊び方」は買って持っているんですが、まだ全部読めてないっす(いろいろと余裕がない)。

私が出演する「MOON」という戯曲でも「都市」という概念が幾度か登場しています。今回のKUROGOKUさんの「MOON」では都市を描くという感じではなく、人間ドラマをフォーカスにあてた演出になっていますが、それでも登場人物たちが棲んでいる「都市」という要素は無視できないと思います。

因みに「MOON」の初演は1989年。この翌年にバブルがはじけるので、この1989年というのはバブル絶頂期です。

私が読んだ如月小春さんのエッセイは「東京ガール(1989)」と「都市の遊び方(1988)」の2冊です(※読了はしてない)。この2冊は同じ作家が書いたものと思えないほどにテイストが異なっています。

「都市の遊び方」ではその名の通り、東京という町をどのようにして楽しめるのか、というのを如月氏の視点から綴られているエッセイです。まだ全然読めてはないので詳しくは書けてないんですが、そこで描かれているのは「冷静な観察者」としての側面で書かれている印象を持っています。

これは私が「MOON」を最初に読んだときに思ったことなんですが、「如月氏は東京が好きじゃないのかな?」という印象を受けました。「MOON」が1989年に初演が上演されたものですが、バブル絶頂期に生きる人間を悲観的に描いているように思えたのです(読む回数が増えていくにつれて少し印象は変わっていきましたが)。

ですが「東京ガール」を読んだとき、私の如月氏に対する印象は変わりました(これも国会図書館で70%ぐらいしか読めてない)。「東京ガール」ではかなりガーリーな感じで東京という都市を楽しむ如月氏の文章を触れることができます。例えば「デパートで買い物するの楽しいわ」的な感じとか。少なくとも東京という都市を悲観的に描くことはしてません。

そも、如月氏は東京生まれ東京育ちのシティガールでした。生まれてこの方ずっと東京という町に過ごしてきて、彼女は東京という町が好きなのだという印象を受ける文章が綴られています。

そんな如月さんは東京内で引っ越しをしまくっていたようなんですが、「東京ガール」では以下のような記述があります。

私は東京生まれの東京育ちではあるが、東京を故郷としては捉えていない。
故郷と考えるにはあまりに広く、変化に富んでおり、加えて、私の育った場所が棲み込みの甘い地域だったからのようだ。
そこで東京人でありながら、”東京”に棲みたいと思い続け、さすらい続けてしまったのではなかろうか。

如月小春「東京ガール」1989年 PHP研究所 P.41から抜粋

変化していく都市、変わらない景色、それも全部ひっくるめて興味深く観察していき、そして彼女なりにその現象を愛していたという印象を受ける、なかなか独特な本だったなと思いました。

2冊を読んで、如月小春氏は東京という町を愛しつつ、変容していく東京という都市を冷静に観察している方なのだと思いました。東京という町が嫌いなのかと思いきや楽しくてしょうがないっていうか、そんな感じ。でも地元とも言い切れない宙ぶらりんな感じ。でもちょっと分かる、気がする。

私は地元が千葉県市川市なんですが、あれは郊外ってのもあるんですが住宅街のテイストは昔と変わらないですね(ここ7,8年は行ってないけど、どうせそんなに変わってねぇだろって感じがする)。

でも東京はそうじゃない、んだろうなぁ。

新宿とか渋谷とか開発すごいですからね。池袋もアニメイトが変わったり、アニメイト近くの公園に新しい文化が生まれていたり。池袋駅西口のロマンス通りがめっちゃ臭くなってたり。新宿は開発がすごすぎて迷路みたいになってるし、渋谷は2週間たてば道路が変わってるし。

でもそんな東京でも変わってないところはある(そういう描写も「東京ガール」にありました)。
冷静に考えてみれば不思議な都市ですよね、東京って。

まぁつらつらと語ってしまいましたが、如月氏はめっちゃ東京という都市と深く結びついてる存在であるってことです。

吉田はこんな舞台に出たかった「MOON」

そんな如月小春氏が書いた戯曲が「MOON」です。なんとなくテイストがお分かりになるでしょうか?

いい戯曲なんですよ、マジで

いやマジで。こういう社会を描いた作品に出たかったんですよマジで!

いや風刺がない作品がダメとか出たくないわけでは決してないんですよ?でもこういう社会を風刺した作品がマジでたまらねぇ。社会派な作品(例を挙げると二兎社の永井愛さんとか)がよだれが出るほどに好きだし、稽古も楽しかったですね。稽古をやればやるほどによくできている戯曲だなと思わされます。

「水は鉄さびがきつい」「ビルがどどうどどうと倒れる」、「大きな力/手に負えない力」、「あぁ幸せになりたい」、「物価は安いし給料低いし」と1989年代を鑑みれば色々と思うことがあるセリフがいっぱい出てきます。当時を知っている人は思い出しながら観ていただきたいですね。

因みに1993年1月生まれの私はいわゆる「失われた30年」の間に生まれた世代の人間です。そんな私が「ジャパン・アズ・ナンバーワン」って言葉を初めて聞いたのは数年前なんですが、初めて知ったときは鼻で笑いました。「そんなわけねぇだろバーカ」って素直に思いましたね。でもそんな言葉がまかり通ってた時代があったと思うと、もはや私のとっては異世界のように感じられます。

今回自分が演じるカイグリという役は、私が良くやる、というか私の得意分野みたいなところでもある「騒がしい男」と形容できる青年です。あんまりネタバレしない範囲でこれを語るにはちょっと難しいところがあるんですが、「パブリックイメージにのっとると、良い男、と言える」みたいな感じです。

私が演じると「ちょっといけ好かないけど、憎めない男」になってる、かなと思います。まぁこんな役は得意です(笑)
そんなカイグリにしかできない役どころはきっちりと存在しますからね。自分の仕事は果たしますよ。

さてさて、こんなところですかね。長々と綴りましたが、とにかく吉田が出たい舞台に出れてテンション上がってるのは分かったかと思います(笑)

えりちゃんみたいに自分の原体験を通じて何か思った、っていうのはあんまりないかも(笑)
俺は「MOONおもれぇ!!でも全部言語化しようと思うとネタバレみたいにもなっちゃうし難しいかもしれねぇ、どうしよう!でも勢いのまま書くかぁ!」ってノリで本記事を書いています(笑)

そんなMOON!ついに19日より初日がスタート!

気合入れて作品を提供しますので、どうぞお楽しみに!!

KUROGOKU produce vol.12 『MOON』

作:如月小春
演出:黒柳安弘(KUROGOKU)

日時

2025年11月19日(水)〜23日(日)

11月19日(水)18:00★
11月20日(木)14:00/19:00★
11月21日(金)14:00/19:00
11月22日(土)13:00/18:00
11月23日(日)13:00〜

※★=割引Day
※受付・開場は開演の30分前

料金

一般:4,500円
U25割引(25歳以下):3,500円(要身分証提示)
割引Day:4,000円(※要予約指定)

場所

阿佐ヶ谷シアターシャイン
東京都杉並区阿佐谷南1-15-15
東京メトロ丸の内線「南阿佐ヶ谷」駅から徒歩2分、 JR中央線「阿佐ヶ谷」駅から徒歩7分

出演

倉田 楽(劇団楽)
水沢 綾(企画ユニットあいてむぼっくす)
山口礼子(地球儀)
長沢彩乃
野田香保里(劇団民藝)
吉田 光(The All Mighnority)
高橋ゆな
佐藤英征
金谷ひろし(萬國四季協會)

スタッフ

製作・照明:黒柳安弘(KUROGOKU)
舞台監督・美術:佐藤 司
音楽・音響:小森広翔
舞台写真:野村尊司(KUROGOKU)
映像撮影:小坂広夢
イラスト:小佐井彩加
衣装協力:美里瑠李
当日運営:平野 岬
制作:大澤このみ(KUROGOKU)
ほか

  • LINEで送る